肥料も農薬もいらない、水撒きもいらない。
それで毎年毎年土が良くなる。
そんな魔法のような農法があったらどうしますか?
「ヒューゲルベッド(hugel bed)」。
この奇妙で可愛らしい名前の農法を私に教えてくれたのは、近所に住むアメリカ人の生物学者でした。
土の中に小さな森を作る?
調べてみるとドイツや東欧で何百年も前から行われてきた伝統的な農法で、自然派ワイン好きならご存知の方も多いシュタイナーのバイオダナミック農法の手法の中にも登場します。
私はフルオーガニック農家として生計を立てておりますが、恥ずかしながら初めて聞く農法でした。
ドイツ語で「マウンド栽培」を意味するこの農法は、簡単に言えば「土の中に小さな森を作る」農法です。
丸太や枝、落ち葉や腐葉土を人為的に積み上げて、有機物が林床に蓄積するときに起こる養分循環を再現させる仕組みです。
この循環により去年より今年、今年より来年と土壌は時間の経過とともに豊かになっていきます。
もしこのシステムを広葉樹だけで作りあげられれば(ベッドの大きさにもよりますが)20年以上もの間、この畑に栄養素を供給することができるそうです。
またこの小さな森はそれぞれの材料がスポンジのように水を保持するので、定期的に水を撒く作業も必要なくなると言います。
ヒューゲルベッドはそれ自体の中に、何年も続く生態系を作り出すことができるというのです。
すごくないですか?
3つのベース素材で実験!
Aー枝と木(針葉樹広葉樹ミックス)
レモンの剪定や周りの森の剪定で多くの枝や木が出てきます。
これらの有効活用が出来るのは面白そうです。

Bー原木椎茸の廃ホダ木(広葉樹)
さらに友人がやっている原木椎茸で役目を終えたホダ木たち。
この処理も全国の原木農家が困っている問題なので使えるか実験してみましょう。

Aー製材された木(針葉樹)
そして建築やDIYで出た端材。
これも養分として土に循環することができれば燃やさずに済みます。

接着剤などを使用した合板や塗装などの加工された木材は使わないようにしましょう
やってみる
A(枝)とB(ホダ木)は地面を10cmほど掘って木を並べました。
掘ることで枠を作り、土台を安定させました。
大きさはそれぞれ幅1M、長さ2.5Mとしています。
C(製材)は形、大きさがバラバラなので円形の枠を作ってそこに投入しました。
この枠はあぜ道を作るための板で、連結して伸ばしていくことができるものです。
今回は高さ30cmの板を3枚使い、形が安定する円形にしました。
コメリなどで1枚300円ほどで買えると思います。
マイクロプラスティックを気にされる方もいらっしゃると思いますが、木材で作ると防腐剤を塗布する必要が出てきます。どちらが安全かはそれぞれの判断だと思います。
作り方(炭素層)
手順は簡単です。
ベースとなる木を下に敷き、隙間を埋めるように小枝、腐葉土、落ち葉などをどんどん積み重ねていきます。
「小さな森を作る」ことをイメージしながら進めます。





落ち葉や腐葉土は近くに森がないと手に入れづらいです。
ホームセンターで気軽に買うでも良いですし、ピクニックやドライブがてら探す旅に出るのも楽しい思い出になります。
この季節がベストシーズンです。
ぜひ採集の旅に出られてください。
※クマや遭難にはくれぐれもご注意を
※山や森に持ち主がいる場合は許可が必要です
おすすめなのはダム周りです。
落ち葉が集まりやすく、腐葉土やベースとなる木も手に入るかもしれません。
「ここにあるんじゃないか?」と推理したり知恵を働かせながら探すドライブも楽しいですよ。
さて、ここで積み上げたのは炭素(カーボン)素材です。
作り方(土壌層)
次のレイヤーは土です。
理想としては森の腐葉土を大量に積み上げたいところですが、それもなかなか難しい。
手軽にホームセンターの腐葉土か黒土(肥料は入っていないもの)、ネットから良さそうなものを購入するのが早いかもしれません。
もしもコンポストなどで安心できる完熟堆肥や緑肥を作られていたら、この土に混ぜ込んでください。
コンポストをやられていない場合、ちょっとお高いかもしれませんが安全性の高いものとしてこちらの土をお勧めしておきます。
無肥料ですがミネラルだけ整えられていて、放射能検査もクリアされています。
フカフカの土で今回の家庭菜園では私も少し使わせてもらっています(フルオーガニック農園には入れていません)。
土は少なくとも30cm以上積み上げましょう。
人によっては60cm以上積む人もいるようです。
土台の幅が1Mあれば、30cm積むことはできると思います。




作り方(表層)
この時点であなたの作った小さな森は 50〜70cmほどの高さになっていると思います。
このまま土が剥き出しだといろいろと問題があるので、上に草をかぶせておきます(マルチング)。
これにより土の乾燥を防いだり、流出を防いだり、空気中の悪いものが着床するのを防いでくれます。
そして生態系も草と土の中で生まれてくれます。
出来上がりましたか?
まるで人が埋葬されているような・・・いやいや、私たちは新たな生態系の循環するシステムを構築しました。


お疲れ様でした!
注意点と運用方法
今回は家庭菜園ということでやりやすい形、大きさで作ってみました。
皆さまはそれぞれの環境や条件があると思うので、自由に楽しんで取り組んでみてください。
これは実験なのです。
楽しまないと!
参考までにアメリカ人の生物学者さんが送ってくれたwikiを貼っておきます。
私はこれを見てワクワクしてしまいました。
断面図とか萌えです。
日本版よりもこちらの方が詳しいです
↑Google先生に翻訳してもらいましょう。
このヒューゲルベッドは土台の炭素素材が分解されていくことで土壌が育っていきます。
ということはどんどん低く低くなっていきます。
その辺をご承知の上、最初の高さなどをご検討ください。
私の状況は追って報告してまいりますが、このまま春まで寝かせてから種を降ろしていこうと思っています。
最初に作る時は窒素よりも炭素の方が強い土になっているので、窒素分をあまり必要としないもの(枝豆など)を育てると良いかもしれません。
ヨーロッパでは伝統的な農法とはいえ日本ではまだまだ知られていないやり方です。
最初の構築は大変ですが、その後の運用が手軽であればやる価値は大いにありますね。
ぜひ私と一緒に挑戦していただければ励みになります!